現代版・鴻門の会 〜キャラクター紹介〜

 ・劉邦(りゅうほう)→金融会社「漢中」社長。やーさんである。項羽より先に始皇帝から金を取り立ててしまった為、彼を怒らせてしまう。引きこもり系硬派

 ・項羽(こうう)→金融会社「楚王」社長。同じくやーさん。始皇帝から取り立てる金が無くなったことで劉邦に逆ギレ。体育会系脳味噌筋肉

 ・子嬰(しえい)→「漢中」・「楚王」から金を借りた、自らで破滅を呼び込む人。 無職ギャンブラー(ありがち)

 ・張良(ちょうりょう)→劉邦の秘書(SP?)。項伯とは昔からの親友。笑貌の修羅

 ・樊(はん)かい→劉邦専属SP。項羽から劉邦を守ろうとする。典型的熱血漢

 ・范増(はんぞう)→項羽の秘書(SP)。項羽を使って劉邦を殺そうとする。(妄想癖が激しい・・・・カモ・・・・・)空回り系殺(や)り手

 ・項伯(こうはく)→項羽の叔父。「楚王」の会長(ご隠居)。友人の張良に項羽が怒髪天(?)であることを密告。権力争いに負けた者

 ・項荘(こうそう)→項羽専属SP。范増に命じられて劉邦を殺そうとする(←ロシアンルーレットVv)寡黙を貫くヲトコ



「ねぇ〜張良ぉ〜、やっぱり帰ろうよぉ。面倒くさいじゃぁん。大体、何で僕等が行かなきゃ行けないワケ?兵士たちに任せればいいじゃーん」

 劉邦曰くはこうである。
 だが、張良にしてみれば、

「何を言ってらっしゃるのデスか。日々こうやって精進していれば必ず報われますって。項羽さんだってそうしていらっしゃるでしょう?」
「そーだけどぉ・・・・そぉなのかな〜・・・・・?」
「そうデスって。劉邦さんも引きこもってばかりいないで、偶にはシャバの空気でも楽しんで下さい。あ、劉邦さん此処ですよ」

 シャバというには余りにも寂しい所ではないか。
 楽しめと言うのならもっと街中にでも連れていって欲しいものだ・・・とは思うものの、今回は其れが目的ではない為、諦めるとしよう。
 張良に連れてこられた場所は、路地裏の更に奥にあるような小さなアパート。
 現在、ここに目的のホシが居るらしい。
 懐王率いる「楚国」という名の組に劉邦は属していたのだが、何時の間にやら俗に言う金貸し会社の1つを任せられるまでに見初められていた。
 同じく項羽もそのような立場に居るらしく、懐王曰く、

「先に咸陽に到達した方に、王の称号をあげるよん☆」
 ということらしい。
 王の称号・・・つまり「楚国」を受け継ぐという事か。
 劉邦的にはどうでもいい事なのだが、張良と項羽(と言うか范増)にしてみれば、互いの命とプライドを掛けた一騎打ちらしかった。
 だから張良はこうやってお供を連れて(今回は劉邦だが)金集めに精を出している訳だった。

「ここが、え〜っと・・・・子嬰の家?」
「然り。我が社から利子込み5,628万もの借金をしている癖に、取り立て様とする度、場所を変え姿を変えしぶとく踏み倒す厄介な輩です。良いデスか、劉邦さん。彼に情けは無用です。貴方は人が優しすぎますからね、絶対に口を開かないで下さい。目つきの悪さと背の高さは天下一品なんですから、上から見下ろすだけで結構デス!」

 そりゃそうだ。連日の徹夜のお陰で目の下は隈だらけの眼球充血。折角の美形が台無しというものである。

「だって今ハマってるゲームがなかなか難しくて。こんなに頑張ってるのに・・・」
「ひきこもりっぷりを自慢しないで下さい。兎に角、わ・か・り・ま・し・た・か?!」
「・・・・・・・・・・・・ハイ」

 あぁ〜やめてくれ。そんな可愛らしい微笑みを浮かべて見上げないでくれ〜。

「張良、ラブユー
「あ、劉邦さん!居ましたよ、彼デス!てンめ、この糞餓鬼がぁ〜!さっさと金払わんかいコラァ!!あんま舐めた真似してっと蹴り殺すぞ、ドサンピンがっ!」

 抱き付こうとした劉邦を殴り飛ばしながら、子嬰を見つけた張良は罵声を浴びせ掛け掴みかかる。
 逃げ遅れた子嬰はまんまと捕まり、小柄な張良に罵られ微笑みを浮かべた(本人はそうして居るつもりであるが、端から見れば末恐ろしい光景だったであろう)大柄な劉邦に見下ろされながら、身柄の拘束、所持金+全財産合わせて5,620万弱を一週間以内に支払う契約を交わさせられた。










「はぁ?どーゆぅこったよソレは?!巫山戯てんのかっ!莫迦かてめぇ!!」

 一方の「楚王」では、劉邦の一連の行動を密告者の左司馬曹無傷から知った范増がブチキレていた。

項羽!項羽!!こぉぉぉぉーーうぅーーーーーー!!!
「ハイハイハイ、此処にいますよ、何ですかっ?」
「何ですか、じゃねぇだろがよ!今の話聞いてたんだろ?子嬰は俺等ん所からも金借りてんだぞ?!しかも奴から返金されれば向こうも俺等も咸陽達成だ!劉邦に先越されたらこっちはどーなんだよ!」
「・・・・・・・あぁ!」
「気付くのが遅せぇんだよ、この脳味噌筋肉莫迦!」

 今まさに気付いたと手を打つ項羽に、范増は思わず足摺り。
 項羽はハッハッハと苦笑。

「いや、スマン。どうも知恵はてんで駄目でな」
「今のは知恵使うまでもねぇだろーよ!あー、なんでこんな奴が懐王はお気に入りなんだよ!」
「常識を越えた筋肉っぷりがいいんだと。いや、照れるねぇ〜///」
誉めてねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!もぉいい!兎に角あれだ、劉邦潰すぞ!」
「ペラペラ?」
「二次元の世界でものを考えんなっつーの!それ以前に潰すの意味が違ウ!殺せってことだよっ」
「あ?なんだよ、同士討ちしろってのか?やだゼ〜。一応アレでも組のブレインだしさぁ」
「張良も俺もいるだろが。簡単だろ?銃で頭パーン!脳味噌グチャーッ!コレだけじゃねぇか。なぁ・・・殺っちまおうぜ?」

 嫌がる項羽の耳元で甘く囁く悪魔の声。
 次第に項羽は操られていく様に目が虚ろになっていく。
 この様子を『家政婦は見た!』状態で覗いていた項伯は顔面蒼白になる。
 『憧れの劉邦先パイが殺されちゃう・・・!』と(←思ったかどうかは定かではない)。
 項伯は走った。走って走って走りに走った。妹の結婚を祝う為に、友を救う為に。(え?)
 走れ項伯!(←書物が違う)
 取り敢えずセリカ(豊○車)あたりが無難ではないでしょうか。














「あ〜、やっぱそうなっちゃったかぁ。うん、困ったねぇ」

 さして困った風もなく、のんびりとお茶を啜りながらの言葉。
 ついつい釣られてのんびりしてしまう。

「はぁ〜、のどかデスねぇ。。。って、はっ!こんな事をしている場合ではありませんよ!我々の行動を知った項羽が逆ギレして殺しに来るですって?!ソレ本当、はっくん?」
「そうなんだよ、りょーくん。俺見ちゃってさ、もぅ恐くて恐くて.....」
「二人は仲良しさんなんだねぇ。美しき友情ってかんじ?僕も昔は項羽とそんな仲だったなぁ。僕は彼の事を項くんと呼んでいてね?楽しかったなぁ、野山を駆け回り、川で泳ぎ・・・・一緒にうり坊狩りもしたっけ。思えば僕の人生の中で、一番輝いていた時だったよ・・・・」

 遠〜い目をして言う劉邦。
 張良と項伯は互いに顔を見合わせて困惑する。

「一体、彼には何があったんだろーね・・・」
「どうやら、過去の何かが彼をこうしてしまったと言う事デスね・・・」

 なんと儚き事であろうか。
 まだ22歳という若さでありながら、過去を想い昔は良かったと嘆く。
 こんな事があって良いのだろうか、いや否!

「兎に角、劉邦さん!こんな所で茶ぁ啜りながら黄昏てる場合じゃありませんよ!今からこんな事していたら年食ってから何するつもりですかっ。問題なのは項羽さんの事でしょう?!」
「あ゙あ゙〜項くぅ〜ん(泣)昔に戻りたいよ〜〜〜〜〜ぉ」
「彼は泣き上戸なのかぃ?」
「あーもー劉邦さん、しっかりして下さいよ。こんな時に貴方の自慢のブレインを使わずして何とするんですかっ」

 だだっ子の子供をあやすように、だーだーと涙を流す劉邦の頭をポフポフと撫でる張良。
 微笑ましい光景である。

「ゔー・・・優じいね゙ぇ、張良。あり゙がどう・・・・」
「一応主人公なんですから鼻水垂れ流しは勘弁して下さい。
じゃあ、はっくん。君はもう帰った方がいいんじゃないかな。此処に来ている事がばれたらヤバイだろぅ?後は私達で策は講じておくから」
「うん。ではそうするよ。何とか項羽を宥めておくから頑張って。気をつけて」

 応接室を出ていこうとする項伯に、劉邦は鼻をかみながら簡単な挨拶をする。
 それに答えると、彼は部屋から去っていった。

「・・・すみません、劉邦さん。今回の事は私の行動が軽率でした。もっと状況を調査・把握しておけばこんな事には・・・・」
「へぇ?!いや、張良の責任じゃないよ。元々、僕が全部張良に任せちゃってるのが悪いんだから。
まぁ、そうだねぇ。項羽に話し合いはムリだから、謝っておこうか。彼を上からねじ伏せようなんざ僕等には出来ゃしないからねぇ。素直に下手に出ておきましょーか」













「で、劉邦が用意した場所が此処か」

 曰く、黒塗りのベンツの扉を乱暴に閉めながらの范増。
 二日前、お互いの親睦を深める為にcなどと巫山戯(ふざけ)た招待状を送ってきた劉邦。
 范増にしてみれば憤懣(ふんまん)遣る方無い事だったが、(暗示の解けた)項羽は須く乗り気である。
 結局項羽には甘い范増のこと、断る事も出来なかったし、劉邦に引導を渡してやるには又とないチャンスでもある。
 劉邦に招待されたのは懐石料理店「鴻門」。と言う事は、食事会なのは間違いない。
 ならば食事に混ぜての毒殺も可能だ。大抵こういう店は個室であるから、仮に失敗したとしてもサイレンサー付の銃が有れば誰かに気付かれる事もない。

「やくざの抗争なんて日常茶飯事だからな・・・・」
 クックッと喉の奥を鳴らし、目を細める。
 だがしかし、そんな范増とは相反するメロディーが流れる。


------- チャッチャッチャッチャッ チャッチャチャン♪ チャッチャッチャッチャッ.....


「あ、劉邦からメール来た」
「って、おい!何だその着メロわ?!ミニハムずなんて微妙すぎるだろーがよっ!」
「その年でこの着メロが何か判っちまう方が微妙だと思うが」

 知ったかぶりをして歌手名を出したのが裏目に出た。
 後ろでケータイをピッピッと操作しながらの項羽から、痛いツッコミが入る。

「え〜と?
『ごめんねぇ。急に用事が入っちゃったからちょっと遅れちゃうカモ〜(>_<;)先に入って待っててねー☆(^0^)/~~~』
「何だよ、そのノリは?えらく馴れ馴れしいな、オイ」
「『OK。じゃあ中で待ってるZE☆早く来いよ〜!(^з^)/』・・・送信っと! 范増に文句言われる筋合いは無いぞ。劉邦は俺のダチだからな」
「はぁ?オイオイオイ、項羽さんよ。まさかそりゃ本気な訳じゃねぇよな?敵対してるお前等が、それ以前にあの劉邦と筋肉莫迦のお前がフレンドリーだなんて?」
「○○歳でハロプロに精通してる范増に莫迦にされたくはないぞぉ?!」

 お互いに微笑みを浮かべながら、青筋をヒクつかせての静かな罵り合い。
 痺れを切らして先に手を出したのは、項羽の鳩尾に鉄拳を突き刺した范増。
 しかし、筋肉に覆われた体では殆ど効き目など有りはしなかった。




ミニハムずとか懐かしいな、おい!!!!wwww