嫌いだった奴が、突然、死んだ。
死因なんか知らない、ただ「死んだ」と、聞かされただけだ。
教室の中で、奴の机に、花が生けてあって。
涙ぐみながら担任が、簡潔に「死んだ」と。
「冥福を祈りましょう」  「黙祷を捧げましょう」と
目を瞑らせて。
その中で、俺はただ立ち尽くしていた。
何かが激しく、脆く、崩れ落ちていくような。
吐き気を催す、焦燥感。
啜り泣く声が、耳にねじ込まれる。
「どうして・・・。」 「あんなに良い子だったのに」
「昨日までは」 「とても」 「元気だったのに」
「何が、あったんだろう」
「だって死因は」  「自殺だろ?」


何故。
俺が逃げ出す理由が何処にある。
何もしていない。俺は何もしていないんだ。


何も?


俺が気付いていないだけなのか。
何かをしていたんじゃないのか。
彼奴が、傷つくような、事を。
同じ過ちを、繰り返して。
彼奴を、追いつめて?


内蔵全部が、ぐちゃぐちゃになる。
焼け付くように喉が渇く。
彼奴が、何度も、俺の中で。






------- 痛い -------






これが失うことなのか。
失った後で、気付くなんて。
俺は本当に、彼奴が、彼奴のことが、
嫌いだったのだろうか。
彼奴の中で、俺は、総てを奪ったのか。


人間(ヒト)は、失ってから後悔を繰り返す。
失ったものを、嘆き、悔い、怨み。
莫迦みたいに、求め、欲す。
それがどれ程大きなものかを、痛感する。